片桐美鈴 氏(仮名)
(27歳 女性)
業種:
Webマーケティング→福祉系ベンチャー
職種:
海外事業営業→主管事業リーダー
最高売上記録連続更新の女性は、この会社では成長できないと悩み「小さい会社でボコボコに怒られながら成長したい」と希望する。しかし、その裏に覗く自信の無さを見抜いたコンサルタントは、真逆の企業を提案する。
- ストーリー
“成長への渇望”を抑えきれないトップセールス
「この会社にいても、これ以上成長できない」という焦燥感に日々襲われていた。新卒で入社したWebマーケティング会社で海外事業部をゼロイチで立ち上げ、最高売上記録を3年連続更新、押しも押されもせぬトップセールスの座についた。
来年この会社でナンバーワンになっても、今の繰り返しじゃないか。ここで足踏みしてどうする。“成長への渇望”を抑えきれない片桐さんは、ネットをさまよい、プロコミットキャリアのWebサイトに辿り着く。
面談の場で片桐さんは、“成長への渇望”をプロコミットキャリアのコンサルタントにぶちまけた。「このままでは私はダメになってしまいます。私がトップセールスなのは、あの会社にいるからで、他では通用しません。新しい場所でボコボコに怒られないと、自分は成長できないんです。どこでもいい。一刻も早く動きたいので助けてください」と。
見えたのは、輝かしい実績と裏腹の「自身のなさ」
新卒女性がゼロイチで事業を立ち上げ、トップセールスに駆け上り、社内で一目置かれる存在になったというのに、不安に押しつぶされている。いったい、何が彼女を追い詰めているのだろう。
心の底に潜む“何か”を確かめるため、コンサルタントは仕事への思いや、日常のこと、周囲の環境、生い立ちまで話を伺った。見えてきたのは、その輝かしい実績とは裏腹の「自信のなさ」だった。自分自身を極端に卑下し、承認欲求を抱えている。その根は、生い立ちに関わっており、簡単に払しょくできるものではないとコンサルタントは判断した。
面談をもとに求人票とマッチングした結果、78件の企業がリストに上がった。それも当然だった。27歳で、ゼロイチから走り出せる爆発的な突破力があり、営業実績も抜群の女性はどこだってほしいに決まっている。問題は、片桐さんの内面だ。コンサルタントは、78社のリストを提示しながら、今後の方針について提案を行った。
あえて本人の要望と正反対の企業を提案
「この78社を受ければ60社から内定をもらえます。だからこそ慎重に選択しなければなりません。片桐さんは、面談で小さい企業で怒られながら成長したいとおっしゃいましたが、私の提案は真逆です。ある程度規模が大きく人を育てる体制が整っている企業をお勧めします」と説明し、78社の中から片桐さんの条件に合う5社と、コンサルタントが勧める5社のリストを示し、「私が責任もってお勧めできるのは、この10社です」と提案した。
すると、片桐さんは不快な表情を隠さず、こう言い放った。「私の要望をちゃんと聞いていましたか?この規模の会社に私がやるべき仕事はないと思います」と。
このとき、コンサルタントは確信した。やはり、片桐さんは自信がないんだと。大手を望まないのは、バリバリ働く人たちの中で、自分は通用しないかもしれないという不安を抱えているからだと。
転職して現職を再現することが本当の成長といえますか?
「片桐さんは、現職同様にバリバリ働き、またトップセールスになるつもりですか?それは今の再現に過ぎず、本当の成長とはいえないのではないですか。真の成長を求めるなら、できないことにチャレンジして新しい能力を身に付けるべきです。私が勧める、この5社へいくと最初は大変ですが、長い目で見れば絶対に飛躍できるはずです」とコンサルタントは、その5社を進める理由を説明した。
素直な片桐さんは「ご提案の理由に納得したので、この10社すべて応募します」と即答した。
10社の面接を同時進行するのは、かなり難しい。なぜなら、先に内定が出ると回答をせかされて、後半の企業を断ることになったり、逆に、先に出た内定を断ってしまい後悔することが、よくあるからである。
そこでコンサルタントは、選考回数の多い企業から順にセッティングし、なるべく内定時期が同じになるよう工夫を凝らして転職活動をサポートした。
転職の主役の座を奪ってはいけない
1次面接7社通過、2次面接は5社に絞り、最終面接に残ったのは3社だった。結果的に全社から内定レターが届き、どこを選ぶべきか片桐さんは迷った。
「どの企業を選んでも相当苦労すると思います。かつてない挫折感を味わうことを覚悟の上で、それでもがんばりたいと思える会社を選んでください」とコンサルタントはアドバイスし、結論は本人の意思を尊重した。
“転職の主役の座を奪ってはいけない”これはコンサルタントの座右の銘だった。エージェント型の転職活動は、コンサルタントが手取り足取り指導しがちで、いつの間にか本人から「お任せするので、適当に調整してください」といわれ、他人事になってしまうことがある。
こうなると、転職後も自分で選んだ自覚がなく早期離職のリスクが高まる。プロコミットキャリアではコンサルタント全員がこのことを肝に銘じ、転職のサポートを行っている。
円満な退社も転職活動の重要なテーマ
悩んだ末、片桐さんは、コンサルタントが提案した福祉系ビジネスを展開する大手ベンチャーへの入社を決めた。本人の生い立ちで社会福祉に関わる原体験があり、この領域でならつらくてもがんばれると、最後は本人の意思で決断した。
転職活動はこれで終わりではない。円満な退社も転職活動の重要なテーマである。
コンサルタントは転職活動中に、何度も「勝手に動かないでください」とアドバイスを送った。上司や同僚に相談することも固く禁じた。なぜなら、トップセールスの退社を会社が喜ぶはずはなく、ときに人事のつながりを通じてプレッシャーをかけられるリスクがあるし、会社に残留しても転職希望のレッテルを貼られてしまい、何も良いことはない。まして、本人より先に上司の耳に転職話が届いたら、業務に支障が出ることを避けられないからだ。
コンサルタントのアドバイスを素直に守った片桐さんは円満退社し、無事セカンドステージへ進むことができた。
自分が絶対に選ばない会社がベストだと入社して気付いた
片桐さんは、今、福祉系ベンチャー企業で営業に加え、新規事業も任され、バリバリ働いている。外回りの営業が多く、プロコミットキャリアの近くまで来ると、コンサルタントを誘ってランチする仲が続いている。
「もう毎日ボロボロですよ」と片桐さんが言うと「だって、ボロボロになりたいと言っていたじゃないですか」とコンサルタントが突っ込む。ランチを終えると、片桐さんは手紙を手渡し、笑顔で帰っていった。
その手紙には「自信のなさを見抜いてアドバイスしてくれたこと、本当に感謝しています。上司や同僚に褒められても、親から褒められても、モチベーションは上がらなかったけど、転職支援のプロから仕事の実績やスタンスを褒められたことはエネルギーになりました。転職先は、自分だったら絶対選ばない会社でしたけど、本当にベストだと感じています。プロコミットキャリアに相談して、本当に良かったです」と記されていた。