「なぜ今の仕事をしているのですか?」「今後どうなりたいですか?」
これらの質問に対して、瞬時に答えられる人はどれくらいいるでしょうか。
キャリアデザインを描くことは、仕事はもちろん、人生を豊かに過ごす上でとても大切なことです。ここでは、キャリアデザインの効果的な設計方法についてご説明します。
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キャリアデザインの設計に必要な3つの要素
年功序列や終身雇用制度が崩れつつある現在、以前よりも仕事や働き方を変えることが当たり前の時代になってきました。しかし、仕事の自由度が高まった反面、自分のキャリアをみずから設計することが求められています。
キャリアデザインを設計する上では、大きく分けて「何をやりたいか(Will)」「何ができるか(Can)」「何をやるべきか(Must)」という3つの要素が重要になります。 順を追って見ていきましょう。
1.「何をやりたいか(Will)」
まず、1つ目の「何をやりたいか」。
3つの要素の中では最も簡単そうに見えますが、自分のやりたいことが見つかっている人は多くはありません。
Willを出発点にするのも悪いことではありませんが、油断すると出だしでつまずいてしまう危険性もはらんでいます。
「やりたいこと」を考えるには、「どんなことが好きなのか、どんなことにやりがいを感じるのか、どんなことに興味を引かれるのか」といった問いに置き換えてみるのもいいでしょう。いきなりWillをベースに業種や職種といったキャリアの軸を探そうとすると無理が生じることも多いからです。
一方で、そうすると野球や映画といった趣味の面でしか好きなことが思い浮かばない人もいるかと思います。確かにキャリアプランを考える場合、こうした直線的な考え方ではなかなか答えが出てきません。
そこでひとつ、具体的な方法をご紹介したいと思います。一定の選択肢を自分に与えてみるやり方です。
転職エージェントに求人票の束をもらい、机の上に広げてみます。その中から興味がないもの、面白くないと思ったものはどんどん机の下に落としていきましょう。次に、「これは面白そうだ」と思ったものを机の上の方に寄せていきましょう。
そうすると、
- 机の上の方にある求人票
- 床に落ちた求人票
- 机の中ほどにある求人票
に分かれることになります。それらを眺めて、
- なぜこの案件に興味を持てなかったのか(床に落としたのか)
- なぜこの案件に興味を持ったのか(机の上の方に寄せたのか)
- なぜこの案件はどちらでもないのか(机の中ほどに残ったのか)
を考えます。これによって、自分が職業人として「やりたいこと」を見つけるヒントになります。
2.「何ができるか(Can)」
「何ができるか」を考える際には、「自社以外に身を置いてもできる」と言えるだけの汎用性やレベルを備えているかが重要になります。転職エージェントや周りの人の目を入れて、客観性をもたせることも大切です。
スキルだけにフォーカスした結果、極端に自信喪失して「私は何もできない」と落ち込んでしまう人もいますが、その必要はありません。働いてきた以上、必ず何かしらの力は付いているはずです。「これはできると言えるかな」「しいて挙げるならこれかな」というレベルでも構いません。ポータブルスキルという言葉があります。これは業種や職種などの環境が変わっても、「持ち運び可能なスキル」という意味です。現職の部署では生かす場面がなくとも、仕事に生かせそうな何かがある場合は、それをあなたの「できること」として大事にしてください。
3.「何をやるべきか(Must)」
「何をやりたいか」「何ができるか」は比較的わかりやすいといえますが、「何をやるべきか」は自分の内面を見つめるだけではなかなか思い付きません。実はここがとても重要で、多くの候補者がつまずきやすいところでもあります。
「何をやるべきか(Must)」を考えるにあたっては、大事なポイントが2つあります。
- 社会や世の中の流れにおいて、自分はどこに身を置くべきか
- 企業のニーズにどう応えるか
という2点です。
最近は副業も認められつつありますが、自分のキャリアを集中投資する先を見極めるのは非常に重要です。
「何をやるべきか」の第一候補は現職に留まる道ですが、その場合は「今、自分が身を置いている市場に将来性があるか?」を考える必要があります。
たとえば現在は大手といえる企業に勤務している場合であっても、技術の進化などこれからの世の中の流れを考えると、次第に先細りになっていくと予想できるケースもあるでしょう。
これからの自分の立ち位置を見つけるには、ただ「これをやりたい」という希望だけでなく、時代や将来を見据えた客観性が必要です。
もう1つは、「企業のニーズにどう応えるか」という点です。
「何をやるべきか」をもう一歩深めていく上では、「企業側にとって自分を採用するメリットがあるか」「働いている企業から求められているものは何か」という客観的な視点を持つことも大切です。
たとえば「自分はこういうことをやりたい」「こういうことができる」と目標やスキルをアピールしても、それが企業側のニーズと合致していなければ意味がありません。どこにどういうニーズがあって、自分はそれにどう応えるのか(応えられるのか)を考える必要があります。
目標達成に必要な要素を洗い出し、一歩目のアクションを決める
成長市場において、ニーズがますます強まるポジションに身を置くためには、客観性や第三者の視点を取り入れることが重要です。
特に転職エージェントは候補者の相談を受ける中でこうした観点からの情報が蓄積されているため、「何をやるべきか」を考える上で相談するといいでしょう。
時に自分の内面を見つめ、時に第三者の意見を取り入れながらこの3つの要素を考えることが、効果的なキャリアデザインの設計に結びつきます。
そして、これまでに考えた「Will」「Can」「Must」を踏まえ、「自分はどうなっていたいか」というゴールイメージを時間軸とともに設定してみましょう。
設定したゴールイメージ=「なりたい自分」に対して、今の自分はどんな点が足りていないのか、今後伸ばすべき能力は何か、必要なスキルを身につけるためにはどうすればいいかを考えます。これを考えることで、現状の課題や描いたキャリアに到達するために必要な要素がクリアになっていきます。
キャリアの達成に必要な要素を洗い出してみると、すぐに取りかかれるものと時間を要するもの、優先順位が高いものと低いものが出てきます。
まずは優先度が高く、すぐに取りかかれることを中心に体系立てて課題を設定しましょう。できれば具体的な行動にまで落とし込み、日々実行できるのが理想的です。また、数値や振り返りやすい目標を立てることも大切です。
キャリアデザインは目標設計をしてからがスタートです。「なりたい自分」に近づくために、設定した課題に向けた最初の一歩を踏み出すことが何より大切です。