「なぜ転職しようと考えたのですか?」「前の会社を退職した理由は何ですか?」
このように、中途採用の面接で面接官が転職理由を聞くのは、同じ理由で自社を退職しないかどうかを判断するためです。面接官は、この人はなぜ現職を辞めようとしているのか、自社に入社したとしても同じ理由で辞めないかどうかを確認したいと考えているのです。
ここでは、転職理由を聞かれた際にはどう回答すればよいのか、どう回答してはいけないのか、また本当はネガティブな転職理由がある際にはどうしたらよいのかをお伝えします。
- 目次
やってはいけない転職理由の答え方
それでは、ネガティブな転職理由がある場合には、それをどのように伝えればよいのでしょうか。
重要なのは、ネガティブな転職理由がある場合、それを強引にポジティブなものにすり替えたり偽ったりしないほうがよいということです。その理由は2つあります。
1つ目の理由は、理由をすり替えたり偽ったりすると、面接官が「なぜ現職を辞めたいのか、自社を同じ理由で辞めないか」を判断できないからです。これらの知りたいことを判断できないと、面接官はフラストレーションを感じ、コミュニケーションが成立しないと評価され、印象はよくありません。
もう1つの理由は、面接官は何人もの転職希望者に会っているため、候補者の表情や語尾で「本音ではない」と分かってしまうからです。本音で話さない応募者の印象がよくなることはありません。万が一、面接の場はしのげたとしても、入社後にギャップやミスマッチを感じてしまうこともありますので、転職理由に関して嘘をつくことは双方にとってよくない結果をもたらす可能性があるのです。
正しい転職理由の伝え方
そうはいっても、実際にネガティブな転職理由がある場合はどうしたらよいのでしょうか。
転職理由の伝え方のポイントは、具体的な事実を伝えることです。そして、企業側が最も知りたいのは、転職希望者が入社したあと「当社で活躍できるか」という「未来のこと」です。これを踏まえて、実際にネガティブな転職理由の例を取り上げ、どのように面接官に伝えるべきか、考えてみましょう。
例えば、「上に役職者が多数おり、上が詰まっているため、なかなか昇進できなそうだ」というのが本当の転職理由だとしましょう。
NG回答方法の例
「新しい職場で、経験を活かして活躍し、それ次第でキャリアアップできるようにしたいと考えています。現職では、役職者が固定されており、これ以上の昇格のチャンスがないことが不満なので、転職したいです。」
このように、ネガティブな要素や不満に感じていることをそのまま伝えてしまっては印象がよくなりません。それでは、どのように回答すればよいのでしょうか。
OK回答方法の例
「新しい職場で、今までの経験を活かして活躍し、それ次第でキャリアアップできるようにしたいと考えています。現職では、マネージャー以上の部署異動がほとんどなく、またマネージャー職への昇格も直近4年間行われていない状況です。自分の仕事の幅を能動的に広げるために、御社のようなチャレンジングな環境で活躍したいと考えております。」
「現職では、マネージャー以上の部署異動がほとんどなく」「マネージャー職への昇格も直近4年間行われていない」などの具体的な事実を伝えた上で、「自分の仕事の幅を能動的に広げるため」というポジティブな動機を添えます。これにより、面接官はこの応募者が自発的にキャリアを形成したいと考えており、自社の社風とマッチすると判断する可能性が高まります。
転職理由を整理するための3つのステップ
それでは、実際にネガティブな転職理由がある場合、どのようにその伝え方を考えたら良いのでしょうか。3つのステップで整理していく方法をお伝えします。
ステップ1 退職したい理由を書き出す
まず、退職したい理由を大小問わず全て書き出します。今回は、次のようなネガティブ要素が転職活動をする理由になったと仮定します。
例:
- ルーティンワークが続く仕事に飽きた
- 何でも自分の手柄にする上司にうんざりした
- いつも同僚の尻拭いばかりでヤル気がなくなった
ステップ2 退職したい理由からネガティブ要素が解消されたらどのような良いことがあるか考えてみる
1.「ルーティンワークが続く仕事に飽きた」が解消されて、多種多様な仕事ができるようになった。その結果、
- 経験が増えてノウハウを蓄積することができる
- 自分自身が成長を実感することができる
- モチベーションを高く維持することができる
2.「何でも自分の手柄にする上司にうんざりした」が解消されて上司が自分の手柄を認めてくれるようになった。その結果、
- 上司になんでも相談できるようになる
- もっと認めてほしいと仕事を頑張れるようになる
3.「いつも同僚の尻拭いばかりでヤル気がなくなった」が解消されて自分の仕事に専念できるようになった。その結果、
- 自分の時間が確保でき残業時間が減る
- 同僚との人間関係がスムーズになる
ネガティブな転職理由が、少しポジティブに変換されていきます。
ここで出てきた内容は、本来もっている志向や理想の状態が多く含まれているはずです。なぜなら、それが達成できていないためネガティブな感情が生まれるからです。
ステップ3. 退職したい理由にプラスして、転職でどのような希望を叶えたいのか明確にする
「退職したい理由」からネガティブな要素をなくしたものが客観的な事実です。この事実と共に、「転職によって自分が叶えたい希望はどんなものか」を合わせて面接官に伝える必要があります。
最後のステップで、ステップ2で考えたポジティブな要素を使って、「転職によって自分が叶えたい希望はどんなものか」を合わせた内容として面接官に伝えます。
1.「ルーティンワークが続く仕事に飽きた」がポジティブ変換された転職理由の例
- 「多種多様な仕事をすることでノウハウを蓄積しつつ、蓄積したノウハウを社内共有できるような仕事をしていきたいと思い、そのことが実現可能であろう御社を志望しました」
2.「何でも自分の手柄にする上司にうんざりした」がポジティブ変換された転職理由の例
- 「どんなことでも上司や同僚に情報共有をすることでチーム力が向上して売上などの結果につながるような仕事をしていきたいと思い、このことが実現できるのは御社だと考えて志望しました」
3.「いつも同僚の尻拭いばかりでヤル気がなくなった」がポジティブ変換された転職理由の例
- 「自分の時間を確保しながらも、関係者全員が力を合わせてプロジェクトを進めている御社のような会社で仕事をしていきたいと考え、志望しました」
いかがでしょうか。ネガティブな要素を裏返した表現をすることで、自分の本質的な志向に近しい転職理由になるのではないでしょうか。
企業側も転職理由にネガティブな要素がゼロだとは思っていない
実は、採用企業側は転職希望者の転職理由にネガティブな要素がゼロだとは考えていません。なぜなら、人は現職(前職)に対して何らかのネガティブな要素を感じているから転職するのであり、100%ポジティブに捉えているにもかかわらず転職しようと思う人はめったにいません。
それでも企業側が転職理由を聞くのは、転職理由の中から「この人はこのポジションに適切か」「企業風土に合いそうか」「厳しい状況を乗り切れそうか」などの知りたいことのヒントを探し、自社に合った人材を獲得したいからなのです。
面接の準備を十分に行うことで、ネガティブな転職理由に隠されている自分自身の本音に気づき、転職活動に役立てましょう。